ピアノレッスン
「浩也様、いつご帰国なされたのですか」

秋月がそう尋ねると、浩也はその言葉を完全に無視して私に言った。

「亜澄、行くぞ」

「い、行くってどこに?」

「お前をもらいに来た」

「へ?」

・・・もらいに・・・?

って、どういうこと?

「お前を嫁にしてやるって言ってるんだ」




え?えええ?




浩也は私が八木澤家に引き取られた直後に生まれた次男だ。

私と血がつながっていると思ったまま育てられた。

とても仲良しだったのに、中学にあがると突然私をいじめるようになった。

そして中3の夏、突然引き離されるように留学させられてしまった。

それからはまったく連絡が取れない状態になり、時折お兄ちゃんから話を聞く程度だった。

心配もしていた。

どこでどんなふうに暮らしているのか。

でも両親も心配していなかったし、お兄ちゃんも楽しくやってるみたいだなんていうから安心してたのに・・・
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