ピアノレッスン


「亜澄・・・」



秋月が触れようとしてくる手を払いのける。


「・・・出てって。お願いだから一人にして」


ふっと秋月がベットを離れる気配がして、内心ほっとする。

でも、そうじゃなかった。


「・・・さっき言ったよな、ここでは俺がご主人様だって」

そう言いながら、ベットの中に入ってくる。


「・・・やっ」

あっという間に私は背中から秋月の腕の中に抱きしめられた。

その手は布団の中でゆっくりとアンサンブルニットのボタンを外していく。


「・・・やだ・・・もうやめて・・・」

泣きながら懇願してもその手は止まらなかった。

「・・・・泣いて嫌がってる顔もそそる」

耳元で囁かれる言葉はすごくいじわるなのに、声音は優しい。

「・・・やだ・・・」

それでも身体は震える。

怖い・・・

だけど、逃げることもできない。

そのまま身体を預けていると、すっかりボタンを外され秋月の手が素肌に触れた。

あたたかい手のひらが押し付けられ、私は抵抗する気力を失った。





私は、あの家からこの人に売られたんだ。


もう、あの家には戻れない。


もう、戻れないんだ・・・・
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