彼女志願!
「蛇は知恵の実を食べるようにそそのかしただけでなく、イブにもう一つ、とても重要なことをしたからなんです」
「とても重要なことって。いったい何をしたんですか?」
すると彼は、ふっと表情を変えて。顔を寄せ合うほどの小さなテーブルにも関わらず、さらに声をひそめ、私の耳元にささやいた。
「イブに『性の歓び』を教えた」
そのひそやかな声に、耳の後ろからぶわわ、と全身に甘い痺れが広がる。
そんな私を見て、穂積さんは穏やかに微笑し、言葉を続けた。
「その形から『蛇』を『男根』とみなし、中世の神学者たちは『蛇』を『女の足の間に滑り込む悪魔の化身』としたんです」
美術書を閉じる穂積さんの手。
美しく長い指。
それは蛇に見えなくも、ないかもしれない。