彼女志願!

上半身を起こすと、


「たまごがゆを作ったので、召し上がってください」


と、穂積さん。


そしてすっくと立ち上がると、私の隣に腰を下ろし、ローテーブルの上に置いたトレイを自分の膝の上に乗せる。



「どうぞ」



彼はレンゲでおかゆをすくい、私の口元に運ぶ。


ふんわりとお米の甘い香りがして、食欲をくすぐった。


いつの間に……


でも――



「えっと……自分で、食べられます……。あの、それに穂積さん、お仕事行かないとまずくないですか?」



穂積さんは私以外にもたくさんの作家を抱える編集者だ。


私におかゆを食べさせる時間なんてなさそうなんだけど……。




< 171 / 648 >

この作品をシェア

pagetop