『好き』をあなたに

和解

静かになった教室に居心地の悪さを感じ、嫌な汗をかきはじめた時…タイミングよくなったチャイムに、安堵の息をはいた。


｢ 春菜 ｣

いつの間にか横に弘人君が立っていた。
周りを見るとすでに皆が動き出していて、慌てて立ち上がる。


｢ おい…、弁当。｣

教室を出ようと歩き出して、動かない弘人君に言われて、自分が何も持ってない事に気づく。
慌てて机の横からお弁当の入った鞄を取る。


「ご、ごめんね？」


前を歩く彼が不機嫌そうなのは、自分のせいかと、とりあえず謝ってみる。


小声の謝罪は聞こえなかったのか、無視されたのか彼から何も反応がない。
どうしようかと焦っていると急に立ち止まった彼の背中にぶつかりそうになった。


危なかった～。

彼、弘人君の後ろで胸を撫で下ろしていると、前から舌打ちが聞こえた。


顔をあげ弘人君の後ろから前を覗くと屋上に続く階段の下に男子がいた。

壁にもたれて立つ男子―『高橋克己』だった。