手を伸ばせば、届く距離まで。

□真っ向勝負




想像する。


真樹や、華織がいなくなってしまうことを。


華織から嫌悪される。


真樹から突き放される。


俺はそれで、久野だけいてくれて…


「…ありがとう、久野」


笑うことは、出来なかった。


だって、分かってしまった。


「人間は欲が深いからな。俺だけじゃ、足りないに決まってる」


俺は、すべてが欲しい、ってことに。



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