そしていつかの記憶より
「ちょっと、話があるんだけど」



アタシがそう電話をすると、彼は低いテンションで相槌を打った。






彼を待つ数分は、ただイライラが募ってしょうがなかった。
”アレ”はアタシ達のルールだった。


彼女に知られてはいけない。
彼女が自分で思い出さない限りは、教えない。




それが、アタシ達サークル内での、約束事。










「・・・待ったか、桜井」



いつになく冷静な声色の彼。
そんな彼…佐崎の言葉を遮るように、単刀直入に問いただす。



「・・・告白されたって、本当?」



私が睨むように佐崎を見つめると、視線を外された。




「・・・ああ・・・された。」




佐崎は、意外と真面目な奴だった。
決めたことはとことんやる。

「どうするつもりなの?付き合うの?」
「付き合う・・・?俺が?そんなの、無理に決まってるだろ・・!」



苦痛を顔に浮かべて、小さく叫ぶ。
アタシもその表情に心が痛んだ。


だけど、ハッキリさせなきゃいけない。
ルールだから。





・・・だから、わざと彼の心を抉るような質問をする。





「・・・でも、好きなんでしょ?」




佐崎は、入学当初からいつかが好きだった。
最初の頃はよく いつかにアプローチをしていた。
どんなタイプが好きか、とかアタシに質問してきたときもあった。









「・・・ああ、好きだよ・・・だけど」








アタシだって、聞きたくなかった。
けど、もしも いつかに記憶が戻ったとき、後悔はしてほしくないから。









「だけど、親友の、・・・文人の彼女と付き合うなんて、出来るわけないだろ・・・・っ!!」










アタシには、この関係を維持する役目がある。
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