そしていつかの記憶より
「俺、文人と一緒にいつかちゃんの家に行ったんだ。」
「・・・?」


ふじ先輩が何を言っているのか、理解ができなかった。
木原とふじ先輩が、何故いつかの家に・・・?




「いつかちゃんが退院する少し前かな。文人が俺たちに土下座して、二人の関係を黙っててほしいって頼んだ後。」


ふじ先輩は思い出すかのように語る。



「文人、ご両親にも土下座してさ。あの日のこと謝って、自分との関係を言わないでくれって。
それからいつかちゃんの部屋に上がらせてもらって、思い出の品全部処分したんだよ」


「え・・・っ?」



アタシは驚いて、自分の耳を疑った。
木原がまさかそこまでやっているとは、思わなくて。



「俺もご両親もさすがにそこまでしなくてもと言ったんだよ。でも文人、譲らなくてね」



いやぁあれには俺も参ったよ、と苦笑いを浮かべる。
先輩は、我が子を見るかのように語っていく。



アタシは、どうして木原がそこまでするのか本気で理解が出来なかった。
そんな様子を知ってか知らずか、加奈先輩は自分の中の憶測を話してくれた。


「多分ね、ようちゃん・・・。ふみくんは、誰よりも一番にいっちゃんのことを考えたのよ。
考えて、考えて・・・記憶がない子にはどう接すればいいか、自分なりに考えた結果・・・。”思い出させない”選択肢を選んだの」


「な、なんでそうなるのか・・アタシにはわかりませんっ」



理解ができない。
思い出してほしいはずだ。
好きな人に忘れられたら、悲しいはずだ。




なのに、どうして───……?
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