恋しても、愛しても、夢は見ないから

『あら?優ちゃん歩いてきたの?』


家に帰ると、途中で降りだした雨に
かなりコートが濡れてしまっていて、
妻がタオルを慌てて持ってきた。


今週はそういやずっと歩きだったな…



彼女はやっぱり水曜日に
あの場所へは来なかった。



もしかしたら…

そんな思いも、すぐに褪せた。




彼女にとっては気まぐれのうちの
些細な出来事の1つなんだろう。




そう思った。




ただ残るのは、彼女のあの
震えるように濡れるあの瞳だった。





来週はバスで帰ろう。





< 115 / 119 >

この作品をシェア

pagetop