この恋が叶わなくても

――…

「大翔が浮気?」

あたしの話を聞き終えた咲希の第一感想だった。
目を見開いてびっくりしている咲希の様子から、大翔は客観的に見て浮気する人には見えなかったらしい。


「あんなに、…美春に溺愛ってかんじだったのに。美春の勘違いだったっていう可能性はないの?」

『多分……。インターホンの奥で女の人が大翔を呼ぶ声が聞こえちゃったから』

「そっか…。」



それからしばらくの沈黙。


「美春はさ、まだ好きなの?」

『えっ?』

「大翔のことが」

『……多分、まだ好き。好きをやめたくても、今までずっと好きだった人だからそんなに簡単にやめられないからすごく辛い。大翔を好きでいても辛いだけって、わかってはいるのだけれどね』

「無理にやめなくていいんだよ。無理にやめようとすることが、美春にとっての辛さになることもあるのだから」


咲希は椅子から立ち上がって、大きく伸びをした。


『大翔が好きっていうことが、あたしの心の傷になったみたい』


動かせば痛む傷。

消毒しようとすると痛む傷。

安静にすると痛みが和らぐ傷。



治る手段は見つかるのだろうか。


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