これが、初恋
story-2

次は数学だからあゆにノートを借りなきゃいけない。

「あゆ、ノー『小林~』っえ」


後ろから同じくあゆを呼ぶ声。
もちろんあゆは、私より大きい声の主に、倍の声量で返事をする。


「はぁぁぁぁぁい」
「早く来いよ」
「うん、わかったけどちょっと待って」
「急げっての!」
「もう1人いても大丈夫?」
「どっちでもいいから」

そんなよくわからない会話を聞いた後、あゆの元へ-・・・

「あゆっ」
「あー智花」
「ノート借りようと思って・・・」
「そうだったね」

“ちょっと待ってねー”と言いながら鞄の中をごそごそと探るあゆ。


「はい、どうぞ」
「ありがとう」
「あ、智花も一緒に行こうよ」


返事も聞かずに私の手を引っ張って歩き出すあゆ。
教室を出てしまったので、少し焦ってあゆに話しかける。


「ねぇ、あゆ。どこ行くの?」
「ひーみーつー。なーんてね」

“あはは”と笑いながら階段を上る。


最後の一段を上って目に入るのは、空き教室。
1年生の中で不良の溜まり場とも言われている。
煙草のにおいもすれば、お菓子の甘い香り。
女の子が来るようなところじゃないと聞いた。
それも前を歩く--・・・・あゆから。




-ガラッ
あゆが戸を開けると、そこには見かけない男子が2人。
それから安堂君に、同じクラスの日向。
と-・・・関口君。

「おー、来た来た!」
「小林2分遅刻でーす」
「ギリギリセーフだし~」
「あゆ~、あ、智花も来たんだ!」

賑やかになる雰囲気の中、あゆは見かけない男子の方へ行った。

「日向、ここ1人でいたの?」
日向とは何かとよく話すから仲が良い。

「あ、みんなうちの幼馴染!」
「えぇ!超多くない?」
「2人だけ違うんだけどね」
「え、みんなじゃないよ」

“まぁまぁ”と、天然な日向は言った。


「それより、あゆめっちゃ顔赤いー」
「あ、それ絶対安藤君のせい・・・」

“だよねー”と日向が大笑いする。
私もつられて大笑いをする。


少ししてあゆが私に手招きをする。


「この子が智花です」
あゆの声に全員の視線が私に集まる。
少し恥ずかしくなって俯くと、
「あ、谷原?」

そう言って1人の男子が私を見て微笑む。
-・・・関口君だ。


「谷原智花ですっ」
「うわ~初めて喋った」
なんて言いながらニコニコとする。















< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop