ルビゴンの河の先





敬語忘れたとかまだ手に日本刀を持っているとか、そんなことはどうでも良かった。


もう疑われるのはこりごりなだけ。
私は彼の目の前に湯飲みを差しだし、受け取るのを待つ。






「はぁ。…わかったわかった、少しは信用しよう」


呆れたような声色でそう言い、湯飲みを受け取るまでおよそ1分。生涯でこんなにスリル満点な1分間もないだろうに。


喉が渇いていたのだろう、彼はあっという間に湯飲みの中身を飲み干すと小さく笑った。



「茶の味は変わらないのだな」


少しだけ。
ほんの少しだけ安心したように、でも寂しそうにそう呟く声に私は何も言えなかった。





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