ユビキリ
『あなたの名前、なんなのね?』
突然、その女性は僕に質問してきた。
「名前ですか・・・。」
『そうなのね!』
「僕に名前なんてありませんよ。」
僕は名前で呼ばれたことがない。
いままで1度も。
『ウソなのね。
人間なんだから名前ぐらいあるのね。』
疑った目で言われた。
「ウソじゃありませんって。
僕はウソなんてついたことない。」
さて、今僕は何回目のウソを言ったのだろう。
『怪しいのね。』
ニヤニヤと何か企んでいるような表情をしていた。