黒い炎

「今そんな気分じゃないんですよ俺」



ベルトにかかる指先を掴み、優しく笑って誘いを断った。



「えー…つまんなーい」



唇を尖らせたセンパイを引き寄せ囁いてやる。



「…今日はこれで許して」



テラッと光る唇に自分の唇を重ね、チュッと吸い上げて微笑んだ。



「ん…もっと」



キスをせがむセンパイに、小さくため息を吐き出しその唇を覆った。



「今度は最後までしてよねっ…」



キスで満足してくれたらしいセンパイ。



これ以上誘っても無理と感じたのだろう、彼女は少し不機嫌に教室を出て行った。



その後ろ姿を見送り、ベタつく唇を拭った。



「あー気分わりぃ…」



したくもねぇキスのせいで、俺の気分は最悪だった。
< 2 / 207 >

この作品をシェア

pagetop