黒い炎
「……やっ…」
ぐいっと近づいた俺の前には、かたかたと震え怯える彼女。
「あんたダレ…」
「キャー!イヤァー!ヤメテェー!」
「ちょっ、えっ?!」
すっと手を伸ばした瞬間、彼女が狂ったように叫びだしたのだ。
その叫び声を聞き、バタバタと慌ててやってきたのは姉の桜。
「鈴<りん>!どうしたの?!…優弥?!」
「イヤァー!」
桜は怪訝な顔で俺を見ると、しゃがみ込んでいた彼女の顔を覗き込むように話しかけていた。
「鈴っ!あたしよ桜!わかる?さ、く、ら」
「さ…くら…ちゃ…ん…?」
桜は両手で彼女の頬を包み込み、彼女と目線を合わせる。
「そう、桜よ…もう大丈夫、あたしがいるから」
抱き締め優しく背中を撫でてやると、彼女は落ち着きを取り戻したようだった。