竜王様のお気に入り
『驚いているのはこっちの方よ』
と、ヤヨイは言ってやりたい気持ちだった。


一目惚れだと、いきなり天界に連れて来られて、言われた言葉が‘心から愛しいと思ってる’なのだ。


『驚くなんてもんじゃないんだから。
しかも、その言葉をくれたのは、竜王様なのよ。』
とは、ヤヨイは言わず。


「え~と、それで先代の竜王陛下は、どうされたんですか?」


とだけ、質問した。


今は自分の感情より、話の続きが気になったのだ。


特別待遇だということに、ヤヨイが関心を示さなかった事に、イオリはほんの僅かに眉を潜めたのだが、先程までと同じ口調で話す。


「先代の竜王陛下は、ハクリュウ様に消されました。
コハク様も息絶えました。」


「・・・・・!」


「しかしながら、それがあっての今の平穏があるようなものですので、ハクリュウ様を責める理由はないのです。
ハクリュウ様も竜王になられてからは、敢えて回りを遠ざけて、孤独な振る舞いをしているかのように、思えてなりません。」


ヤヨイにはまだ、よく話が見えないでいた。


もう少し具体的に教えてほしいと、ヤヨイはイオリに頼んだ。

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