愛を待つ桜
「お姉ちゃんは名古屋の短大だったから。相手の人は判らないわ」

「確実なことは言えんが……。探し出して離婚を成立させ、子供の戸籍をきちんとするべきだろうな。ご両親のためにも２、３日中に君の実家に専門の弁護士を廻そう」


一気に具体的な解決策を提案され、夏海はビックリして聡を見つめた。


「どうして？　どうしてそんなことしてくれるの？」

「この手の和解は、弁護士の専売特許だろう？」

「それは判るけど……でも」

「餅は餅屋だ。私は企業法専門だからな。離婚弁護士と呼ばれる専門家に委ねれば、確実にカタをつけてくれる」

「だからそうじゃなくて。そんなに親身になってくれるとは思わなかったから」


聡はスッと視線を上げると夏海をみつめ微笑んだ。


「君や息子に苦労させた恥知らずって目で見られた……君の家族に」

「……ごめんなさい」

「謝る必要は無い。その通りだからな。お互いの両親が認めてくれたのは、君が庇ってくれたおかげだ。これからのことを考えたら、弁護士が身内にいると便利だとアピールして行くしかないだろう？　汚名返上の点数稼ぎだ」

「私の両親にも、良く見られたいの？」

「当たり前だ。君の両親なら私にとっても両親になる。長い付き合いになるんだ。３年のビハインドを返すためには、できることはなんでもするさ」


そのまま、聡の手は夏海の髪をかき上げ、優しく頬に触れた。
自然とふたつの影がひとつに重なっていく。

少し……聡の心を取り戻せた気がする。

こうして、少しずつ夫婦として寄り添っていけば、いつか本物になれるかもしれない。

ふたりの未来に灯りが点ったようで、夏海も笑顔を返すのだった。




―第４章に続く―



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