愛を待つ桜
いきなり話が飛び、実光らはあんぐりと口を開けたままだ。

“可南子”という名前を思い出すのに、彼らは数10秒を要した。その間も匡はヤケクソ気味に話し続ける。


「アイツさ、もう会えないって言うのに、会ってくれなきゃ死ぬとか言われてさ。でも、そのことが父さんにばれたら」

「お、お前、まだあの女と会ってたのかっ?」


実光はその瞬間、周囲への気遣いを忘れた。

それがあかねの遠縁の娘で、匡の起こした3年前の不始末を思い出し、思わず怒鳴りつけていた。


「会ってるわけないだろ? 3年前だよ。あの後すぐ彼女は結婚したろ? それ以降は会ってないよ」

「ではあのとき、私が話を持って行く前から、夏海くんと関係があったと言ったのは嘘だったのか? 群馬の娘との関係を隠すために、お前は夏海くんを利用したのか?」


匡は、父親の血相が変わったことに気付いた。その怒りを納めようと、慌てて言い訳を追加する。


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