愛を待つ桜
父親と次兄に同時に叱られ、さすがの匡もシュンとなる。


「いや、でも。そんな、由美がなんでそんなことを……だって」


最早、匡は意味不明の呟きを繰り返すことしかできない。


「とにかくだ! 夏海くんとは、見合いの前も後も、一切男女の関係はなかったんだな? 悠がお前の子である可能性は、ゼロで間違いないんだな?」


実光はしつこいほど念を押した。


「あ、ああ、もちろんさ。彼女は俺のことなんか眼中にもなかったよ。なんで、悠くんが俺の子なんだよ。どっからどう見ても兄貴のコピーじゃんか。なあ……そう、だろ?」


匡は、あまりに静かな長兄、聡の顔を覗き込んだ。



その表情は、まるで石膏で創られた彫刻のように蒼白となっている。


そして、生気を失った瞳は、機能を停止させたまま中空を睨んでいた。



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