愛を待つ桜
「本当は明日、渡そうと思っていた。婚約指輪を渡してなかっただろう? その代わりに……」


そう言って聡が夏海の左手薬指に押し込んだのは、フルサークルのエタニティリングであった。

マリッジリングと同じティファニーだ。プラチナの台座にラウンドブリリアントカットのダイヤモンドが並んでいる。隙間なくぐるりと1周することで、途切れることのない永遠の愛を表していた。


「どう……して。だって、明日は悠の誕生日で」

「君が母親になった記念すべき日だ。そして、私を父親にしてくれた……君に、いくら感謝しても足りない日だよ。内緒で用意して驚かそうと思ったんだが、どうやら裏目に出たらしい。不安にさせて済まなかった」


ギュッと両手を握られ、夏海は思わず聡の唇にキスして、そのまま彼にもたれ掛かった。


「いいかい、夏海。この先、君が私を捨てる日があっても、私から君に別れを告げることはない。私は君しか愛せないし、愛するつもりもない。君に愛される為なら何でもする……忠実なしもべだよ」

「私だってそうよ。あなたに愛されることだけを夢見て来たんだもの」


聡は夏海の手を離すと、彼女を掬うように抱き上げた。夏海も、自由になった腕を聡の首に回し、彼に身体を預ける。

そのままベッドの中央に夏海は下ろされ……双葉も羨む夫婦の夜は、ゆっくりと更けていくのだった。


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