ランデヴー
「だから結婚したし、子供も欲しい」


私はその言葉にふと顔を上げ、響子さんの方を見る。


彼女はとても穏やかで、柔らかい表情をしていた。



愛してる――その言葉が私の胸に重くのしかかる。


彼女も、彼を、愛してる……。



「あなた程の情熱は確かにないかもしれない。でも、愛し方って人それぞれだと思いませんか? ……私と夫が別れることはありません。絶対に。そして、彼とあなたが一緒になることも有り得ない」


響子さんのその言葉は鋭い刃となって、私の胸を突き刺さした。


それは痛みと共に私の記憶を揺さぶる。



彼女の言葉が、『妻と別れることはできない』と言ったあの日の陽介の言葉と重なったから。



「何故夫が私とのことをあなたに話さなかったのかわからないけど……だとしたら私からは何も言わない方がいいのかしら……」


響子さんは独り言のようにそう呟く。



さっきから彼女はそうやって含みを持たせた言い方をするが、私には何のことを言っているのかさっぱりわからない。
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