琥珀色の誘惑 ―日本編―
「花嫁の純潔は、非常に重要なことだ」

「はぁ? そんなこと、あなたの花嫁に聞けばいいでしょう」

「だから、聞いている」

「だから、なんでわたしに聞くんですかっ!?」

「決まっている。君が私の花嫁だからだ!」


バンッ! と再びドアが開く。

今度はミシュアル王子の声に驚いて飛び込んできたようだ。

おそらくはアラビア語で『何でもない』と告げたのだろう。
三度、SPは廊下に出て行った。


「私としたことが……」


ミシュアル王子は苦虫を噛み潰したような顔をして、首を左右に振っている。

舞は、しばらくは呆気に取られていたが……直後に吹き出した。


「ヤダ、もうっ。王子様がそんな冗談言うなんて」


ひょっとしてドッキリだろうか? とまで考える。
別に有名人じゃなくても、一般市民を引っ掛けて笑い者にする番組は存在するのだ。
さぞ間抜けな顔に映っていたことだろう。

そうすると、この王子様も偽物という可能性も……。


「あの……ひょっとして王子様のお芝居をしてるんですか?」


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