琥珀色の誘惑 ―日本編―
サラート……ムスリムには一日五回、お祈りの時間があるという。

朝と正午、日没前、日没後、就寝前が基本だ。
そのたびに、手足や顔、頭を洗う。女性の場合は化粧も落とさなければならない。
国内にはいたるところにお祈り用の寺院(モスク)があり、地面にひれ伏すのが正式らしい。
だが、海外に出る時や忙しい人間は、何処でもできるようにサラート用の絨毯を携帯しているという。


「お前もクアルンで改宗することになる。作法は全て私が教える。心配せずとも良い」


ターセルと違い、王子はやけに優しい口調だ。

どうしてこんなにご機嫌なのだろう……舞がそんなことを考えている間に、彼はすぐ隣まで来ていた。


「舞――そんなに私に逢いたかったのか? 仕方のない奴だ」


その瞬間、ミシュアル王子の手が舞の腰に置かれた。


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