この男、偽装カレシにつき
窓がないため、部屋の中は真っ暗。
慌てて電気を付けたものの、今にも切れそうな嫌な音がしてる。
扉を閉めると、ガチャリ、と鈍い金属音が部屋中に響いた。


薄気味悪いけど、人が寄り付かない校舎の隅だし、仕方ないか。
とりあえず誰も来なければいいんだし、これでようやく安心してアレを返せる。


「何だよ、こんなトコ連れて来やがって」


橘センパイは、ホコリっぽいんだよ、とイライラした様子で制服を叩いてる。


「…そういやお前、どうだったんだよ。
無事ショジョ喪失したか?」


「んなわけあるかー!」


私はとうとうアレをセンパイに突き返した。


ふぅ。
やっと私の手から離れてくれたー。


昨日も、家族に見つかったらって思うと気が気じゃなかったんだから。
制服のスカートからこんなの出てきた日には、お父さんが卒倒しちゃうよ。
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