リセット
───五分後───



食卓には出来立ての朝食が並べられた。どれも美味しそう。


私はパタンと音を立てて本を閉じる。


「『いただきます』」


二人揃って手を合わせる。


昔、零と暮らし始めた頃。

まだあの人がこの世に生きていた頃。



私はこの食前に手を合わせる作法を知らなかった。箸の持ち方もぎこちなく、あの人に酷く叱られた覚えがある。



礼儀作法に人一倍煩かったあの人だから、許せなかったんだろう。



それがなんだか私は嬉しく感じた。叱られてるのに嬉しいなんて変かも知れないが………。



優しく、厳しく私に接してくれたあの人。




大好きだった。



「………サラ?」


ふと、零の声で私は我に返った。

『あっ………何?』

「大丈夫か?ボーッとしてたみたいだけど。飯にも手、つけてねぇみたいだし」

『平気…』


その後、私は黙々とご飯を食べ続けた。




時計が七時五十分を回った頃。


「そろそろ行くか?入学式なんだし、早く行った方がいいだろ?」


と零の提案があった。


入学式は八時二十分。



ここから学校まで車で五分もかからない。



『うん。行く』


校内を探索してみたかったので、迷うことなく零の提案に賛成した。



食べ終わった食器を片付け、零と一緒に家を出る。




お洒落なデザイナーズマンションで一面、ガラス張りのマンションに私達は暮らしてる。



ここら辺は土地が高く、マンションの家賃も結構するらしい。正確な金額は知らないが、二、三十万はするだろう。




そんな高額のお金を払えるのは零が日本を代表する世界でも認められたREIという有名ブランドのデザイナーだからだ。


REIは十代から四十代の女性に愛されているブランド。派手すぎず、甘すぎす、大人な雰囲気の服が多い。



人を惹き付け


笑顔にする



職業



それが零の仕事。



私は誇りに思う



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