ギャルバン!!! 2nd The Re:Bandz!!!!
カエデの部屋に向かう途中、ワタシ達はネオミィに小塚マリコのいるレコード会社へ来るよう呼び出された。





男物の服を着たワタシ達が会議室で待っているとは知らなかった小塚マリコと仲川ユキコは入るなり少し面食らっていた。





「ハロー、みなさん」





最後に現れたネオミィの能天気な挨拶には何のリアクションもしなかったけど。





「それではまず、現状の説明からさせてもらいましょうか」





席に着くなりネオミィは話し始める。





その態度は全てが自分の思惑通りという自信が見受けられた。





「まず、アナタ達ラズルダズルリリーに関してですが、本日付けをもって私ネオミィが代表を務める事務所、Nアーティストユナイトに所属となります。それから、リンナ」





ネオミィがワタシを見てニヤリと笑った。





「リンナは本日正午より私の事務所に移籍です」





「移籍? そんな話………」





「聞いてないのも無理はないわ。だってさっき決まったもの。アナタを部屋から連れ出したのはそのあと。あのマンションも事務所名義だったから。その代わりいっぱい働いてよ。移籍金たっぷり弾んだからね」





いつものかわいらしい小悪魔がワタシを見ている。





「ということで、小塚さん。うちの所属アーティストがそちらのインディーズレーベルでお世話になりたいんですけど、問題ないですよね」





「それは、リンナがラズルダズルリリーに再加入ってことかしら?」





「エル。そういうことでいい?」





エルは声を出さずに大きくうなずいた。





「アタシの代わり」





かすれた小声のエルを見ながら小塚マリコはため息を吐いた。





「どうしても?」





エルはもう一度大きくうなずくと、立ち上がり頭を下げた。





「お願いします」





カエデとミクも立ち上がり机に着くほど頭を下げる。





「小塚さん。ワタシ達はこの四人でバンドがしたいんです。よろしくお願いします」





最後にワタシも頭を下げた。





ちらっと見た小塚マリコは腕を組んだまま黙っていた。





「マリコさん、もういいんじゃないですか? みそぎは済んだようなもんだし、許してあげたら? 陸さんのこと。―――そのことに関してはマリコさんだって同罪なんだし」





「ユキコ」





会議室に小塚マリコの凛とした声が響く。






その声のイメージは、意外と近くにあった。





「それが理由じゃないわ。私はただ、今もリンナの声はバンドよりもソロのほうが魅力を引き出せると思っているだけ」





「バンドだとある程度カラーが限定されて楽曲がかたよりがちになる。だから楽曲のバリエーションが自由になるソロが声質を活かすのに望ましい。ということですよね」





ミクが珍しく発言すると、小塚マリコは少しの驚きを見せた。





「アナタからそんな意見を聞けるとは思わなかった。アナタの言う通りよ。だから私は―――」





「ですが、今回の一件でリンナさんの個人的な活動はしばらく自粛するしかないと思います。個人の仕事は雑誌の撮影だけにしておいたほうが無難でしょうね。たとえ被害者だとしても事件の渦中に存在するのは事実なので」





小塚マリコをさえぎるように話し続けるミクに誰も口出しできなかった。





「ゆえに時間はたっぷりあります。いずれソロ活動を再開するにしてもボイトレを欠かすことはできません。その一環のバンド活動、ということでもいいのではないでしょうか」





ミクは言い放つと一回深呼吸をする。





「すみません。出過ぎたことを申しました」





ともう一度頭を下げた。





「白橋ミクさん。アナタの言っていることは正しい。エルは? どうしたいの?」





小塚マリコがそう言うと会議室にいる全員の視線がエルに集まる。





「………みんなでバンド、やりたい………!」





エルの視線は真っ直ぐに小塚マリコを射抜いていた。





「………私と陸にもこれくらいの絆があれば、解散なんてしなかったかもね」





不意に漏れた笑みは自分自身をあざ笑っているように見えた。





「今は完全にリンナがマークされている以上、他のメンバーの過去も当然のように調べ上げられるわ。元カレとの写真は全部捨てさせなさい。さもないと足元すくわれるわよ」





彼女の強い眼差しがワタシ達を順番に貫く。





―――ああ、やっぱりそうだ。





「―――四人とも、覚悟はいい?」





「はい!」





気合いを入れられたように返事をするワタシ達。





大きくうなずいていたエルを見ると、とびっきりの笑顔の中に、強い眼差しをワタシだけが見つけた。





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