王子様は囚われ王女に恋をする
手紙
ナターシャたちが城へ来てから1週間が経った。

すっかり元気を取り戻したアリシアは
その日、タチアナの相手をして中庭で遊んでいた。

「アリシア様、花輪を作ったからこれあげる!」

白い小さな花で花輪を編んだタチアナは
それをアリシアの頭にちょこんと載せた。

「ありがとう」

にっこりを微笑むアリシアを見て
少し恥ずかしそうに笑ったタチアナは
視線の先に何かを見つけて満面の笑顔になった。

何かと思って振り返ろうとしたアリシアの横を抜けて
タチアナが走っていく。

「カイル様!」

振り返った先には
走ってきたタチアナを抱きとめるカイルの姿があった。

久しぶりに見るその姿に、鼓動が速くなるのを感じたアリシアは
無意識に胸のあたりに手を当てた。

「カイル様、おかえりなさい。タチアナ、待ってたの!」

タチアナを抱き上げたカイルは
いままで見たこともないような優しい笑顔を浮かべていた。

(あんな顔で笑うのね…)

アリシアはその笑顔につい見入った。

「タチアナ、もう立派なレディだね」

カイルにそう言われて、うれしそうに笑うと
タチアナはアリシアのいるほうを指さした。

「いまね、アリシア様と遊んでたの。
タチアナが花輪を作ってあげたのよ。
アリシア様、とってもきれいでしょ?」

カイルの視線がアリシアをとらえる。

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