王子様は囚われ王女に恋をする
「トーマス伯爵から何か知らせが着たんだな?」

カイルの言葉にイライザはうつむく。

「内容は?」

カイルの問いには逆らうことを許さない強い響きがあった。

「…もうすぐ迎えに来る、王宮に刺客を放ったと」

ガタガタと震えながら話すイライザはカイルに言った。

「その知らせを見て、アリシア様はカイル様を心配していたようです」

「僕を?」

カイルはイライザを見た。

「はい、刺客はカイル様を狙っていると書いてあったんです。アリシア様は真っ青になられて取り乱していました。先ほどカイル様がいらっしゃる少し前のことです」

カイルは眠るアリシアに目を向けた。
「カイル様をかばったことはもうトーマス様にも伝わっているはず。いくら王女とは言え、敵を助けたとあればアリシア様も無事ではすみません」

「僕は敵ではないよ」

静かに告げるカイルの言葉にイライザは戸惑う。

「こんなことになるなら、もっと早くに話すべきだった。イライザ、君は国とアリシア様とどちらが大事だ?」

「私の主はアリシア様です。アリシア様がいる場所が私の母国です。たとえそれがメルディアンでなくても」

イライザの迷いのない答えにカイルはうなずいた。

「では君にすべてを話そう。だが。他言は無用だ。アリシアには僕が話す」

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