王子様は囚われ王女に恋をする
目覚め


カイルの呼び方に反応するように
アリシアのまぶたがかすかに震える。

「アリシア!」

いまを逃せば、もう永遠に目覚めないかもしれない。

アリシアの手を強く握りしめ
カイルは必死に呼びかけ続ける。

その時、ふいにアリシアの瞳がうっすらと開いた。

エメラルドグリーンの瞳は、まだ焦点が合っていないように
宙をさまよう。

「アリシア、僕だ。分かるか?」

アリシアの瞳がカイルをとらえる。

「…カイル…様?」

しばらく、ぼんやりとカイルを見つめたあと
アリシアは小さな声でつぶやく。

カイルは安心したようにベッドのそばに座り込んだ。

「…よかった。本当によかった」

アリシアの頬を両手で包むと、額を寄せた。

「カイル様…私、どうして…」

カイルの潤んだ瞳がアリシアを見つめる。

「僕をかばって矢に射られたんだ。それからずっと君は眠っていた。
二度と目を覚まさないかもしれないと言われて…」

「そう…でしたか。
なんだかまだだるくて…」

カイルはアリシアの髪を優しく撫でた。

「眠るといい。何も心配はいらない」

「…はい」

優しい手の感触にアリシアは安心して眠りについた。
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