絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
 見下され、しかもにやにやしながらそういわれても困るんですけど。
「な、にって……、たいしたことは、できないけど。お金もないし。か、肩たたきくらいなら……」
 彼は噴出した。
「かっ、肩たたきしてほしくたって、多分なかなかしてくれないですよ?」
「その気持ちがあることは、覚えておこう」
 彼は立ちあがり、これがシティホテルの幕引きだと悟る。
「……マッサージとかはできませんけど」
 変なマッサージに繋がりそうで怖いので、先に制しておく。
 玄関で靴を履く。ああ、ここから自宅までかなりの距離がある……タクシーつかまるかな。
「まあ、今はこれで……」
 何か出すのかなと振り返ると、彼がかなり近くに近づいてきていて。
「我慢するかな」
 軽く顎をつかまれ、触れるだけの優しいキス。
 え、どうして?
 我慢って何?
 彼はすぐに後ろを向き、
「地下駐車場に車を待たせてある。それに乗って帰れ」
「え、あ、はい……じゃあ、失礼します」
 それだけ言うと、なんとか内ロックを上げ、重い扉を開けた。

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