絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅱ
さて、移動をしてからしばらくの日にちが過ぎた。が、従業員の顔と名前はほとんど覚えられていない。主要なメンバー、特に宮下と仲村の近くにいる者は大体覚えられたが、矢伊豆がまだまだである。もともと全く面識がなかった上に、ちょっと苦手なタイプであるため、やりづらいと自覚してしまっている。
この半月の東都本店を一言で表現すると、宮下店長、だろう。
勉強させられることがたくさんあった。しかし、店長なのに、どこか本社の数字中心の独特の雰囲気を感じさせる独特の雰囲気の持ち主であることも感じた。
次に香月愛。容姿のことばかりで仕事ができるという噂は聞いたことがなかったが、なかなかの腕っぷしであった。
「……香月、今何してた?」
レジカウンターの中で取引先のメーカーへ電話をかけている保留の最中、不思議なことに気づいて問いかけてみる。
「え、何って出張修理の受付ですけど」
「今電話しながらどうしてパソコンで検索した?」
「あぁ、以前どこに依頼したのか分からなくて、とりあえず一番強いところに電話しながら2番目のところをパソコンで検索していました。けどやっぱり電話の所でした」
「仕事が早いわけだ」
「そうですか?」
香月はうれしそうに笑ったので、褒めて良かった、と思う。
「けど私、パソコン苦手なので、いつも電話なんですよ。その方が楽なんです」
「何が楽?」
「目が疲れないから」
なんとも単純な理由に笑ってしまい、思わず周囲を見渡す。大丈夫、皆仕事をしている。
「香月ってなんか健康体だな」
抜群のタイミングで他の従業員に話しかけられたので、そのまま香月との会話も途切れたが、彼女との関係は良好だった。ついでに玉越よしえも。
玉越という人間が一番自分に合うんじゃないかというくらい、合う。仕事が頼みやすい上、ちゃんと気がきくし、あまり上下関係を気にしない。
歴史を気にしない人間が好きだ。
人間は歴史で成り立っている。だがそれを気にするのは好きではない。
今の自分、今日の自分だけを評価してくれた方が、生きている実感がする、というのはオーバーだが、まあ、その方が気楽なのである。
だがしかしそれは、自分の考えであって、他人はそうではないことはちゃんと分かっているし、だから、宮下の、佐藤の、仲村の歴史はちゃんと知っている分だけ、そういう接し方はできている。
多分玉越も、その長年磨かれてきた感でこの人は大丈夫だ、と判断し、そういう接し方で自分に寄ってきたのだろうと思う。
この半月の東都本店を一言で表現すると、宮下店長、だろう。
勉強させられることがたくさんあった。しかし、店長なのに、どこか本社の数字中心の独特の雰囲気を感じさせる独特の雰囲気の持ち主であることも感じた。
次に香月愛。容姿のことばかりで仕事ができるという噂は聞いたことがなかったが、なかなかの腕っぷしであった。
「……香月、今何してた?」
レジカウンターの中で取引先のメーカーへ電話をかけている保留の最中、不思議なことに気づいて問いかけてみる。
「え、何って出張修理の受付ですけど」
「今電話しながらどうしてパソコンで検索した?」
「あぁ、以前どこに依頼したのか分からなくて、とりあえず一番強いところに電話しながら2番目のところをパソコンで検索していました。けどやっぱり電話の所でした」
「仕事が早いわけだ」
「そうですか?」
香月はうれしそうに笑ったので、褒めて良かった、と思う。
「けど私、パソコン苦手なので、いつも電話なんですよ。その方が楽なんです」
「何が楽?」
「目が疲れないから」
なんとも単純な理由に笑ってしまい、思わず周囲を見渡す。大丈夫、皆仕事をしている。
「香月ってなんか健康体だな」
抜群のタイミングで他の従業員に話しかけられたので、そのまま香月との会話も途切れたが、彼女との関係は良好だった。ついでに玉越よしえも。
玉越という人間が一番自分に合うんじゃないかというくらい、合う。仕事が頼みやすい上、ちゃんと気がきくし、あまり上下関係を気にしない。
歴史を気にしない人間が好きだ。
人間は歴史で成り立っている。だがそれを気にするのは好きではない。
今の自分、今日の自分だけを評価してくれた方が、生きている実感がする、というのはオーバーだが、まあ、その方が気楽なのである。
だがしかしそれは、自分の考えであって、他人はそうではないことはちゃんと分かっているし、だから、宮下の、佐藤の、仲村の歴史はちゃんと知っている分だけ、そういう接し方はできている。
多分玉越も、その長年磨かれてきた感でこの人は大丈夫だ、と判断し、そういう接し方で自分に寄ってきたのだろうと思う。