2年3組乙女事情
「でも、今回は気分が悪くはならなかったよ」
あたしは、視線をゆっくりと中村さんに合わせた。
「この歌、亡くなった旦那が好きだったんだよ。昔はよく、歌ってくれと頼まれて……。
今でも、この歌を聞くとあの時のことを思い出すよ」
「そうだったんですか……」
だから昨日、あんなにじっと、大切そうに新聞を見てたのね。
そう思うと、いろいろと納得できる気がした。
昨日の中村さんの表情も。
さっき演奏を始めてから、静かになった中村さんの態度も……。
「前みたいな演奏だったら、ぶっ飛ばしてやろうかと思ったけど……。
今回は全力だったみたいだな。優しくて、丁寧で……ちゃんと、心が入ってたよ。
……今のあんたの笑顔にもね」
「ありがとうございます」
「まぁ、下手なことに変わりはないけどね。本物どころか、あたしにも負けてるよ」
「あらっ!それは失礼致しました」
にっこりと微笑んでそう言うと、中村さんは不機嫌そうに鼻で笑った。
……ちょっと失礼じゃない?
肩を落としたあたしを見て、集まってきていた他の利用者さんが口を開いた。
「さっきの、懐かしい歌だね。もう1度弾いてくれないかい? それに合わせて、今度はみんなで歌ってみたいんだ」
「え……?」
「良いじゃん、舞花!私も、みんなで歌ってるの聞いてみたい!」
きらきらした笑顔を向けてきた芽依を見たら、何となく断れない気分になるのはいつものこと。
仕方がないわね……。
「わかりました。じゃあ、いきますね?」
集まった人みんなにくるっと視線を送ってから、あたしはピアノに向き直った。
あたしは、視線をゆっくりと中村さんに合わせた。
「この歌、亡くなった旦那が好きだったんだよ。昔はよく、歌ってくれと頼まれて……。
今でも、この歌を聞くとあの時のことを思い出すよ」
「そうだったんですか……」
だから昨日、あんなにじっと、大切そうに新聞を見てたのね。
そう思うと、いろいろと納得できる気がした。
昨日の中村さんの表情も。
さっき演奏を始めてから、静かになった中村さんの態度も……。
「前みたいな演奏だったら、ぶっ飛ばしてやろうかと思ったけど……。
今回は全力だったみたいだな。優しくて、丁寧で……ちゃんと、心が入ってたよ。
……今のあんたの笑顔にもね」
「ありがとうございます」
「まぁ、下手なことに変わりはないけどね。本物どころか、あたしにも負けてるよ」
「あらっ!それは失礼致しました」
にっこりと微笑んでそう言うと、中村さんは不機嫌そうに鼻で笑った。
……ちょっと失礼じゃない?
肩を落としたあたしを見て、集まってきていた他の利用者さんが口を開いた。
「さっきの、懐かしい歌だね。もう1度弾いてくれないかい? それに合わせて、今度はみんなで歌ってみたいんだ」
「え……?」
「良いじゃん、舞花!私も、みんなで歌ってるの聞いてみたい!」
きらきらした笑顔を向けてきた芽依を見たら、何となく断れない気分になるのはいつものこと。
仕方がないわね……。
「わかりました。じゃあ、いきますね?」
集まった人みんなにくるっと視線を送ってから、あたしはピアノに向き直った。