2年3組乙女事情
「峯岸!今日のリアクションペーパー集めたら、社会科演習室まで持って来てくれるか?
放課後までに頼む」


「わかりました」



3限目。

現代社会の授業が終わって、あたし達はばたばたと教科書を閉じた。



他の学校では“社会科係”みたいなのがあるらしいけど
1クラス20人のリア女では、そんな仕事は存在しない。



だから、“何かを集めて運ぶ”のは、大体あたしに任されてた。


その分成績はもらえるし、先生達にも可愛がってもらえるからメリットはあるんだけど……



「学級委員も楽じゃないねー」



教科書が片付いてすっきりした机の上に、ぱしっと小さな紙が置かれた。


綺麗に整った文字が、規則正しく並んだ罫線の上をびっしり埋めている。



「もう慣れた。ありす、リアクションペーパー書くの早すぎ。
授業聞いてなかったの?」


「だって、穂高先生って大体最後の方で雑談挟むじゃない?
そこで書いたの」


「なるほどね……」



雑談って言っても、アイツのは説明の間に冗談なんかを少し挟む程度。

全部足したって3分もないくらいなのに……



……やっぱり、ありすって頭良いわ――――



にこっと笑ってリアクションペーパーを受け取ると、ありすはそっと微笑んでから席へ戻った。



こんな瞬間に、ふと思う。



ありすは、どこまで気づいてるんだろう?


って……。



気づいてたって何も言わないのが、ありすだとは思う。



でも、たぶんだけど……

あたしがありすにずかずか踏み込んだみたいに

ありすもいつか、あたしのところにきっと来る。



それが嬉しいような……

嬉しくないような……



何か、変な感じ。
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