2年3組乙女事情
15番 武藤実涼
「お前、下手すぎるだろ」


「仕方がないでしょ!翼と違って不器用なんだから……」


「不器用すぎる、だろ」




ソファーに座る私に背を向けて床に座ってた翼が、くるっと座り直した。



「直してやる。落とせ」


「すごく頑張ったのに……。大体、翼だって上手く出来るかわからないでしょ?」


「うるせぇ。筆ならいつも使ってるから大丈夫だろ。
大体、失敗する度にぎゃーぎゃー騒がれるからテレビに集中できねぇんだよ」



そう言いながら、翼は勝手に私の左手を取った。


1時間以上かけて作り上げた私の努力の結晶が、悲しいくらいあっさりとゼロに近づいてく。



……まぁ、1時間かけてこれしか出来ない私は、相当不器用なんだろうけどね。



「で?いきなり何でこんな色気づいたわけ?
3組15番、武藤実涼さん?」



翼が、上目遣いでにやっとしながら聞いてくる。



両手で丁寧に私の指を触りながらそんなこと言われたら……


何か、お嬢様みたいな気分。



よくあるでしょ?

執事とお嬢様、みたいな。



……まぁ、翼の性格は執事さんとは程遠いんだけどさ。



「良いでしょ。マニキュアくらい」


「変だろ、いきなり。学校にはしていけねぇのに。
夏休みにやるならまだわかるけど、今10月だぞ?阿呆すぎる」
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