2年3組乙女事情

「迷惑でも何でも、毎日待つ。
俺が改心したってこと、わかってほしいし、瑛梨奈ちゃんに認めてほしいから」


「あ、そう。せいぜい頑張ってよね」



ゆるんだ腕を振り払って歩き出すあたしを、井上律がまた追いかけてくる。



「昨日今日で越えられるほど、リア女もあたしもハードル低くないの。本気ならもっとアピールして」



あたしは、振り返ってにっこりと微笑んだ。



「全力で、ね?」



びっくりした表情の井上律を置いて、また足を進める。



「待てって!」



強くそう言われて、気を抜いたところでぐっと手を引っ張られた。


少し前のめりになった体を、何とか支える。



「……覚悟しとけよ」



にやりと微笑んだ井上律を見て、思わず目を見開く。



「このままトイレに行ったりしなければ、ちょっとは考えてあげても良いけど?」


「トイレって何?」


「それは、こっちのセリフ」



冷たい空気の中で、2人の笑い声が重なった。


こんな放課後も、たまには良いのかもしれない。



椿駅までは、きっとあと5分くらい。


とりあえず、いつもと少し違う5分間を楽しんでみたい。



重ねられた手のひらをそっと眺めながら、柄にもなく、そんなことを思い始めた。





~17番 山村瑛梨奈 END~
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