主婦だって恋をする
出発日の発熱

夜更けに戻った我が家には、まだ明かりが点いていた。


起きてるんだ――……


先に寝ていてくれた方が、気持ちが楽だった。

…だけど、そんなの彼の自由だから仕方ない。


私は少し緊張しながら玄関のドアを開けた。鍵を使う必要はなかった。



ただいま…そう言おうとして、止めた。

私は帰ってきたわけじゃない。一晩、泊めてもらうだけの不誠実な妻だから……




「――おかえり、成美」



それなのに、リビングから出てきた夫は以前と変わらない優しい声でそう言ってくれて……

嬉しいのか悲しいのか、その両方なのか……それは解らないけれど、胸が締め付けられた。


< 127 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop