主婦だって恋をする

二人の背中を見送ると、夫が小さな丸椅子に腰掛けて私の手を握った。



「傷、痛む……?」



私は足を動かして痛みの度合いを計ろうと試みたけど、うまくいかなかった。



「わからない。まだ、麻酔が効いてるのかも……」



私が言うと、夫は握っている私の手を自分の頬に当て、そのぬくもりを確かめてからこう言った。



「良かった……無事で」


「ごめんなさい、心配かけて……」



そう謝ってから、私はもう一人私を心配しているであろう人物を思い出した。



「ね……彼は?」


「さっきまで居たんだけど……成美が無事だって聞いて、帰った」


「そう……」



慶のことだから、自分を責めてしまうような気がする……

あの部屋で膝を抱える慶の姿を
想像して、胸が痛んだ。


< 183 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop