主婦だって恋をする

「いらっしゃいませ」


入ってすぐに聞こえたその声は女性のもので、姿を確認すると40代くらいのパートの女性だった。


今日は、居ないみたい……


私は店内をぐるっと一周してから何も買わずに私はお店を出た。


何やってるんだろ、私……



「……帰ろう」



そう呟いたのに、足が動かない。

どうしても、靴のことが気になった。


彼の部屋に、私の存在を感じさせるものがあるのは良くないこと、よね……?


家に、行ってみる――…?


そう思いついたときには私の足は勝手に動いていた。


牛乳や野菜で重くなっている買い物袋を持っているというのに足取りは軽くて。


そして一度行っただけのアパートへの道順も、ちっとも迷わなかった。


< 35 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop