僕等の恋に愛はない

 「ああ…今日は2月14日か…一ヶ月ぶりの目覚めが結婚式かぁ…」


 ガニマタで歩き、ヒールのせいでよろけ、スカートの裾を踏み転ぶ椿に、結姫は目を瞬かせた。

 「あれ?もしかしてノリくん?」

 
 転んだ椿の前にしゃがみ込む結姫の手足は、綺麗なのかどうなのか分からない床にべったりついていた。

 「…もしかしなくても祝詞(のりと)だよ。ユウちゃん。
そんなところに座っちゃダメ。椿に怒られるよ」

 椿はお前だろ!と突っ込む者はいない。

 だって椿は祝詞で祝詞は椿で。椿は結姫のお母さんで、お母さんは祝詞なのだから。

 


< 9 / 80 >

この作品をシェア

pagetop