ランデヴー II
佐和子にとっての賢治は未だ浮気男のイメージのままらしく、いまいち納得がいかないような顔で私が持って来たどら焼きにかぶり付いた。


余程あの事件の印象が強いらしい。


賢治も大変なことをやらかしてくれたものだ……やれやれと思いつつ、私もどら焼きを口に入れる。



「それで? じゃぁ、ゆくゆくは結婚とか考えてる訳?」


「んー……そうだねぇ……」


「……ふぅん?」


私の答えに、佐和子は何か言いたげに目を細めた。



「何よ、喜んでくれないの? 私に恋人ができたこと」


「いや、それは嬉しいよ? 嬉しいけど……」


「嬉しいけど、何?」


佐和子の顔は明らかに不服そうで、祝福してくれないことが腑に落ちない。


あんなに『恋愛をしろ』としつこい程に言っていたのに……。


私は佐和子がもっと喜んでくれると思っていたのだ。



「じゃぁ言うけど……。ゆかり、流されてない?」


「え、何で? どういうこと?」


「いや、本当にモリケンのこと好きなのかなって」


「……好きだよ?」
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