ランデヴー II
だがミーティングが終わりフロアに戻ると、私は紗英ちゃんに声をかけられた。



「ゆかりちゃん……ちょっといい?」


その顔は何だかいつになく深刻そうに見え、私は「どうしたの?」と言いながら後ろをついて行く。


彼女が向かったのは女子トイレだった。


誰もいないのを確認した紗英ちゃんは、くるりと振り返って口を開く。



「ねぇ、何でちゃんと言ってくれなかったの?」


「……え?」


「私、ゆかりちゃんの担当分けてもらえると思ってたのに……」


その言葉に、私はドキッとして目を見開いた。


まさかそのことで責められるとは、思ってもいなかったからだ。



だって私は自分の責任は果たしたつもりでいたし、紗英ちゃんの希望だって通ったはずだ。


確かに私の担当ではないが、新しい仕事は紗英ちゃんとってもプラスになる。



だが紗英ちゃんは不満げな顔で私を軽く睨むようにすると、更に衝撃的な言葉をポツリと呟いた。
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