生意気なハケン君
「貴方ね、何どさくさ紛れに何聞いてるのよ……!」

「だって仕事中、一度も目を合わせてくれなかったじゃないですか」





彼の真剣な眼差しに、

私は怒りを通り越して、どうしようもない脱力感でいっぱいになった。






――何なのよ、この人。




私を嘲笑ってみたり、拗ねた素振り見せたり……。









神城の眼差しに私は目線をどうしても外せなかった。





引き込まれそうなその瞳は、



まるで私の心の中まで見透かされそうだった……――。









――……

――――…………






「……き、椿!」

「――えっ!?」






昨夜の回想から一気に現実へ引き戻される。





「そろそろ行くわよ?休み時間終わっちゃうから」




そう言って空になった紙コップをゴミ箱に捨てると、


同僚はお先にと言って職場へ戻って行く。






「私もそろそろ行こうかな…」



紙コップに入っている残り少ないコーヒーを一気に飲んで、


そのままゴミ箱に投げ捨てる。






――明日は日曜日!もうひとふんばりしますか!







そう意気込んで自分自身に喝を入れる。





そしてヒールの音を響かせながら、休憩室を後にした。
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