猫かぶりは血を被り、冷徹はささやかに一瞥した


――さて。


「待て、お前がまた手綱を握るのか」


「当たり前ですよー。馬車は壊れちゃったけど、エレナが騎手になるんで、ルカ様は後ろで、落ちないようにエレナをぎゅーってしてくださいね」


「……、あいつらが乗っていた馬は」


「逃げちゃったみたいですね」


「私に手綱を預けろ」


「嫌ですよー、まだあばれ……あ、いや、走り足りないんで」


「言い直したつもりでも、馬車を破壊したお前が言えば恐ろしいことには変わらないからな……」


「馬の最高速度は70kmらしいです」


「更に恐ろしいことを抜かすな……!」


かくしての話だが、試行錯誤した説得の末、ルカに手綱の権利が移ったのだった。


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