さくら色 〜好きです、先輩〜

文化祭


ファーストフード店に響く学生の笑い声や主婦の世間話。

その騒がしい店内の片隅で、里美は時々言葉を詰まらせながら今までのことを話してくれた。


「ライブが終わってからも昼休み葵達とご飯を食べた後、図書室で会ってた。でも好きだって気付いたら次の一歩が進まなくてそのまま夏休みに入ったの。夏休みは意味もなく図書室に行って勉強したり、体育館を覗いたりしたけど声は掛けなかった。練習の邪魔をするのは嫌だったし友達がいつも周りにいたから」


私、自分の事でいっぱいいっぱいで全く里美の変化に気付かなかった。

里美は私がおかしい時、いつもすぐに気付いてくれるのに。

それどころか初めての恋で悩んでるのに自分の悩みばかり聞かせて…


これじゃ幼馴染失格だよ。


「夏休みは数回メールするぐらいで二人で会う事はなかった。だから二学期になって佐々木君に会えるのが凄く楽しみだった。なのに…彼は図書室に来なかった」

「…どうして?」

「私にもわからない。メールも返って来なくなったの」


里美は机に置いてある自分の携帯にチラッと視線を向けた。

きっと佐々木君とメールを始めてからこうやって携帯を気にするのが癖になったんだろうな。

私もそうだったから…




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