さくら色 〜好きです、先輩〜

「兄ちゃーん!次はリフティング教えて!」

「お、おう!今行く」


先輩はペットボトルを置いて立ち上がった。


「今日、うちの高校で練習試合なんです。気が向いたら見に来て下さい。恭介も若菜先輩も先生も部員達も私も、皆で待ってますから」

「…行かねぇよ、俺は。チームにはもう属さない」

「それは前の学校のことがあるからですか?」

「…っ!なんで知ってんだよ?」


先輩は息を呑み、私を鋭く睨み付ける。

その目にはさっきまでの戸惑いや動揺は一切感じられない。


「皆心配してます。先輩は一人じゃないんですよ」


一度人を信じられなくなった人が、再び人を信じることは難しいってことぐらいわかってる。

ズタズタに裂かれた心はそう簡単には戻らない。


信じたいのに、疑ってしまう。

こんなにも先輩は愛されているのに…


「私、先輩をサッカー部に入部させてみせます!!これは私から先輩への宣戦布告です!」


私は先輩の目をしっかりと見て、瞬きもせずに言った。


私の…皆の想いが届くように。


先輩もまた、私の宣戦布告を真っ正面から受け止めるように最後まで目を逸らさなかった。



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