時は今



「いやーん。何コレー。お姫様みたーい」

「だろ?だろ?これいいだろ?」

 普段、登校は早い由貴と四季がふたり揃って教室に来ると、めずらしく女子の数人がすでに教室ではしゃいでいた。

 吉野智、荻堂芽衣、桧山亜絵加、後藤志奈子、崎原毬子である。

 机の上には演劇部のものなのか衣装が広げられている。

「おー。おはよう。会長、四季」

 「おはよう」と返して、由貴も四季も智たちのところまで寄って行く。

「何?演劇部の?」

「いや、衣装は演劇部のなんだけど、これは文化祭でクラスで使おうかと思ってるやつ」

「こんな時にしか、こんな衣装着られないもんねー」

「そうそう。『いつもとは真逆の自分』。こういうのもアリよね」

 四季が興味を持ったように衣装を手にとってみる。

「いつもとは真逆の自分ね…。どうせなら映えるようにしたいよね」

「俺が女装しても、すごく男っぽい女になる気がするんだけど」

「そうかなぁ。会長も四季くんも顔立ちがいいから、本田くんもわざとそう仕向けてるのよ」

「うん。微妙な感じになっちゃうような人だと、言わないと思う」

 四季が由貴の顔をじっと見る。

「由貴、『サブリナ』みたいにしちゃえば?オードリー・ヘップバーンが着てた、シンプルな黒のパンツスタイル。それだと由貴の雰囲気にも合うんじゃない?」

 智が感心したように頷く。

「ああ…。女装って言うと服も女の子らしい方向性に行きがちだけど、会長の場合は雰囲気生かした方がかえっていいかもしれないな」

「そう言われても、俺、ヘップバーンって『ローマの休日』くらいしか知らないんだけど」

 芽衣と亜絵加が、俄然楽しくなってきたように言う。

「『サブリナ』いいよー。かっこいいし」



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