ヒーローズ
「おい、東!噂の転校生が呼んでんぞ!」


昼休み。その一声でクラスが静まる。

え、俺?なんで?

あ、みなさん申し遅れましたが、東亮平って俺の名前ね。



「おまえ、知り合いだったの」

「……いや、知んねえ」

「まあいいや、待たすなよ可哀相!初日から呼出しとか、あのこ積極的だなあ」



朝から引き続き異様なテンションの羽柴にこづかれる。

周りで悔しがる声や嫉みやヤジが飛ぶ中、羽柴だけはにこにこと囁いた。


「おまえとあの子が付き合えば、彼女、ウチのクラスに来るようになるよな!そうなりゃ最高!」


そして、頑張ってこいよとガッツポーズ。

いやなにをがんばればいいんだよ。それに愛の告白な訳ないぜ。多分。


廊下には転校生。にこりと微笑んで「ついてきて」と、俺の腕を掴んだ。え、なにこれすごい力なんだけど。


ヒューヒュー冷やかす仲間達の声があっという間に遠くなる。

強引に手を引かれて連れて来られたのは屋上だった。

去年建ったばかりの新校舎。5階建て。


向き合う俺と麗しの転入生。なんかベタ。




「飛び降りてみて」

「……は!?」



風に長い黒髪をなびかせる転校生の口から出たのは、愛の告白なんかではなかった。

前言撤回、全然ベタじゃない。

転校生は相変わらずにこにこしてるけど、冗談言ってる雰囲気ではなかった。



なになに、どういうこと。状況に着いてけない俺は、ただ慌てる。



「あの、え、死ねってこと?いきなりなんなの?」



俺がそう言うと彼女は顔をしかめた。そしてまた信じられないことを言う。



「あなた、飛び降りたことないの?」



あるわけないだろ。だって俺は正真正銘の人間だぜ。

飛び降りたことなんてねーよ。当たり前じゃん。



「もしかして、今までずっと気づかずに生きてきたのかしら?」


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