三日月の下、君に恋した
 けれど、その後の彼の作品は、評判を落とすどころかますます異彩を放ち、傑作と呼ばれるものをつぎつぎと発表した。

 彼が出す本は、出版社がどこであろうと関係なく、必ずベストセラー入りを果たした。今では、誰もが葛城リョウを一流の作家と認めている。本人の人格は別として。


「この本も、発売当時すごい話題になりましたよねー。映画化されたんでしたっけ」

 美也子が本を手にして、「リントウシャなんて名前、聞いたことないけど。儲かったでしょうねー」と、世間の代表みたいなことを言う。


「でも、装丁は素敵」

 菜生が言うと、美也子もぱっと目を輝かせてうなずいた。

「あたしも好き。こういう丁寧なデザイン、何か古めかしくていいですよね。最近じゃあんまり見ないけど」

 確かに今どき珍しい凝った装丁だった。タイトルに使われている書体も、見慣れないものだ。


「美也ちゃんて、デザイン科だっけ」

「へへ。ほとんどサボってましたけどね」


 菜生は美也子から本を受け取り、裏表紙を開いて奥付を見た。発行日は三年前のもので、発行者の名前は黒岩孝之と印刷されていた。
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