三日月の下、君に恋した
「そんな……私のことなら大丈夫です、社長。業務に支障はありませんし、これからも今まで通り勤務させていただくつもりです。秘書の方にまで、こんなお気遣いをしていただくわけには……」

「うん。まあ、そういうと思ったけど、あなたに何かあったら私が困るのでね。その代わりと言っちゃなんだが、条件があります」

「はい」


 ふたたび緊張する菜生の横で、長崎雅美が控えめな笑みを浮かべて二人のようすを見守っている。


「これからも、日曜日にここへ来て私と会ってほしい」


 菜生は意味がわからず、ぼんやりした。


「ここでは仕事の話は一切しない。今までと同じように、通りすがりのじいさんだと思って、私と会ってほしいんですよ。普段着のままでね」

 菜生は頬が熱くなるのを感じ、もぞもぞした。

 今まで社長に見せていた自分の格好が、お世辞にも素敵とは言いがたいひどいものだったことを思い出し、急に恥ずかしくなった。

「それは……でも」
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