三日月の下、君に恋した
「だけど、その、協力はできないから、話を聞くだけだって。それでもよかったら……明日、檜垣町の公園に来てください。そこに、社長がいますから」

「ちょっと待って」


 混乱していた。意味がわからない。


「どうして……沖原さんが、そんなこと」

「ごめんなさい。部外者なのに、余計なことして。でも」

「いや、そういうことじゃなくて」


 携帯電話が間に挟まっているのがうっとうしい。

「今どこ?」

「えーと、会社の前のアルバっていうカフェです」

 自動販売機によりかかりながら立ち上がって、ふらつく頭で考えこむ。


 今、会社の前って言ったよな?


「何でそんなとこに?」

「電話に出てくれないから……待ち伏せです」

 彼女の声のトーンが急速に落ち、電話の向こうの気配が消え入りそうになった。


「わかった。そこにいて」

 携帯電話を切って、デスクにカバンをとりにいき、急いでエレベーターに乗った。
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